アリとキリギリス

あるところに、アリとキリギリスがいました。アリはとても働き者で、毎日餌を運んでは巣にいる子供たちに分け与えて、巣の仲間たちで仲良く暮らしていました。一方キリギリスはアリと違って怠け者で、「宵越しの金は持たない」性格でした。

季節は過ぎて、冬になりました。キリギリスは夏のうちに餌をためておかなかったせいで、とても困りました。このままでは飢え死にしてしまいます。そこで、キリギリスはアリに助けを求めることにしました。

「アリさん、アリさん、少し餌をわけてくれませんか。」
アリは言いました。
「キリギリスさんは、夏にあれほど遊び呆けて、結局餌を集めようともしなかったじゃないですか。しかも私が一生懸命働いていた時には、手伝いもしてくれませんでしたよね。それなのに、自分が困ったら頼るっていうのは、ちょっと虫がよすぎではないですか。」
「それはわかるんだけどね、ぼくもこのままじゃ食べるものが無くて、死んでしまいそうなんだ。一生のお願いだから、助けてくれないか。」
「そこまでいうなら・・・少しだけ餌が余ったので、それを持ってきますから、食べてもいいですよ。」

アリは結構やさしかったのです。
そして、この年はキリギリスは飢え死にせずに済みました。

そして年は過ぎ、また冬がやってきました。キリギリスは例の如く、また冬の準備をしていませんでした。去年のことを思いだして、何かあったらアリに頼ればいいと考えていたからです。

「アリさん、アリさん、少し餌をわけてくれませんか。腹がぺこぺこで死にそうなんです。」
アリはまたかと思いました。そして少しむっとした口調で、
「キリギリスさん。あなたは去年も同じことを言って、私にえさをせがみませんでしたか。私が餌をあげるのに、あなたからは何もしないのは不公平です。」
「そんなこと言ったっけ。」
「いいましたよ。一生のお願い、とまで言ったはずです。」
「覚えてないなあ。」
「キリギリスさんが覚えていようが覚えてなかろうが、それは勝手ですけどね。でもね、今年の冬は餌がとても少なくて、うちの巣もとても他の人にあげられる程、餌が余っているわけじゃないんですよ。」
「でも、アリさん、餌がなかったら、ぼくは死んでしまうんだよ。」
「別にキリギリスさんが死んでも、ぼくらには関係のないことですからね。」
そう言って、きっぱりアリはキリギリスの申し出を断りました。

そこでキリギリスは自分の思い通りにならなかったので、腹を立ててしまいました。

「アリのくせに!餌ため込みやがって!奪い取ってやる!」

夜になりました。キリギリスは、アリの巣に手を突っ込んで、餌を引きずりだしてしまいました。
アリは食べ物がなくなって、とても困りました。でもキリギリスには仕返しができません。キリギリスはアリよりもずっと強かったからです。


おしまい。



さて、アリとキリギリスだけど、これはどういう寓話なのかわからなくて、結局ありみたいに生きることを勧めるのか、それともキリギリスみたいに適当に生きても他から収奪すれば大丈夫、って言いたいのか、救ってくれる人はいるよ、って話をしているのか、どうなんだろうね。