今年度の総括(嘘)

もう季節は冬。

唐突にクリスマスという、胸をかき乱された男たちが意図明白意味不明の言動に走る一方、女の子たちもまた意図不明意味明白の行動を繰り広げる暗黒のイベントの到来を季節は告げ、その雰囲気の醒めやらぬまま、1年の幕引きへと世の中を際限なく駆り立てていく、狂気の時代が今年も到来した。
「終わりよければすべてよし」と誰が言ったのかはさて知らないが、年末にもなると皆「今年の出来事は自分に有利なうちに幕切れにしてしまおう」と並々ならぬ、そして非常に手前勝手な執念を燃やすのである。我々は常に自らの世界において自分こそが主役になろうと小狡く立ち回ってはいるが、年末ほどその傾向が顕著になるのものらしい。

後述の文章はそんな人間のとある1人が悪い頭を少しばかりひねって考えた物語である。思えばこの文章自体が「意図明白意味不明」な行動の帰結であり唐突に思いついたものであるから、読者諸兄がお気になさる必要はさらさらない。むしろ大晦日というこの日にこの広いweb世界の中からたまたまこのブログを閲覧した、そのことは読者諸兄が暇人であることを証明するものではなく、たまたまの偶然、何かのご縁であることなのでしょう、と考えていただければ幸いである。とはいえこの文体にも隔靴掻痒の感は否めないが。

できれば物語が無事に終結することを読者の方々には祈っていただきたい。


<題名のない物語>
チュンチュン。どこからなのかはいざ知らず、何の鳥なのかもいざ知らず、鳥たちが自らの美声に研鑽を重ねる早朝に私は目覚める。さあ、今日も輝かしい1日の始まりだ。
時計に目を向けると8:30。早朝というわけではなかった。むしろ遅い。大遅刻である。
「くそーまた遅刻したかぁぁぁぁあああ!!!!」
こういう時に自分の運命を呪いたくなる。
「落ち着け。落ち着けー俺。落ち着け、そしてしかるべきのちに死ね!」

私はまさに明鏡止水の心境で毎朝の礼拝をおこなう。これは私の習慣であるのだが、十字架のネックレスを首にかけ、数珠を手に掛けながら、メッカの方向にお祈りを捧げるのである。私のことを祈るほど私も利己主義者ではない。これでも全世界の平和と安寧を祈っているつもりである。あーめん。
礼拝を済ませて気づけば8:30を5秒程まわったところだった。
あわてて服を着替えて外に出る。大学が授業開始は9:20からだから、このままでは確実に遅刻する。
私は瞬間移動魔法を使うしかないと決心した。毎朝祈りをささげているのだから、それ位の御利益があってもいいじゃないか。
そう思うと手持ちの傘がいかにも魔法の杖のように見えてきた。もしかすると今日こそは魔法を使いこなせるかもしれない。「イ○ナズン!」私は叫んだ。しかし周りの人間が倒れただけで、瞬間移動には効果はなかった。「くそ!まだMPが足りないのか・・・」私はみずからの無力さを嘆いた。

大学に行く途中で奇妙な光景を見つけた。
前方の交差点で犬同士がけんかをしているのである。お互いに歯をむき出しにして「うー!」と唸っている。はっきりいって2匹とも容姿端麗とは言い難い。
「これは危険だ!」私はとっさに判断した。そして2匹のもとへ駆けつけ、裁判所よろしく争いを調停しようとした。60万円以内の金銭貸借なら簡易裁判所で1日で決着がつくのである。こんなことをこんな緊急時に思いつくなんて、さすが法学部生だ。さすが俺様。
さらに私は犬たちにキ○スト教と○教とイス○ム教のありがたいお言葉を授けた。「汝の敵を愛せよ。」「欲を捨てされ。」「悪口、中傷をなす者に災いあれ。必ずや地獄の炎に焼かれるであろう。」

1匹の犬は最初は盛んに私に吠えたてたが、私の話した言葉に感動したのか、諦めたように肩を落としてすごすごと帰って行った。もう1匹はといえば、軽蔑の眼で私を見たのちガブリと私をかんだ。
「やられた!これは敵の罠だったのだ!!!」私はとっさに判断した。きっと私の能力を羨む者たちが私を殺そうとさまざまに刺客を送りこんできているのだろう。そうだ。そうに違いない。そんな奴らはしかるべきのちに死ねばいい。
しかしそんな奴らには私は負けない。たとえトイレの個室で上から水をかけられモップで叩かれようとも、私は負けない。
私は即座にかまれた患部を確認して、回復魔法を使うしかないと決心した。「ヒール!!」やはり効果はなかった。「くそー!MPが足りないのか・・・」

私はそのまま大学へ到着した。大学到着は9:40。明らかに遅刻である。
そこで驚愕の事実を知ることになる。

なんと、本日は創立記念日のため休校であった。

この私が、学校の休日を把握していなかったとは何たる失態。休日を知ることにかけては幼稚園の頃から、「全国休日を知っている人ランキング」で準優勝するほどの腕前をもつこの私が。
もしかしないでも原因特定は極めて容易だ。私のライフスタイルが変わったからだ。大学に入って週休5日制という輝かしい自宅警備員への第一歩を踏み出すことに成功したからである。私は休みの貴重さを全く認識できなかったのだ。某宗教ではあれほどまでに安息日の重要性が説かれているにも関わらず、である。

そうとわかれば話は早い。
本来今日は大学に来る必要ななどなかった日なのであり、私は自宅でゆっくりとしていればよかったのだ。

うちにはパソコンが私を待っている。
家に帰れば数字の付く某巨大掲示板と、ふた○ちゃんねるが私の主な活動拠点となる。そして寝るまでキーボードに向かって、意味のないAAを貼ったりどうでもいいコピペを張り付けるといった非常に有意義な活動を続ける。
私は浮足立った。早く家に帰りたい。ひきこもりたい。

私はそうやった後に眠りについた。午後8:00頃のことである。


<完>
※このお話はすべて架空の物語です。特定の何かを表しているわけではありません。また主人公のモデルとなる人物もいません。






・本音
唐突に何かお話を書いてみたくて書いてみた。1年は短いようで長くて、長いようで短くて結局今年も何もせずに終わったような気がしてしまうけれど、最後くらい何かしてみようと思ってお話を書いてみた、最近読んだ本に「夜は短し歩けよ乙女」という本があって、冒頭の文体はそこにかなり影響されているなと思う。
それから面白い話を書いてみたいと思ってはいたのだけれど、読みかえしてみると全然面白くなかった。まだまだ修行が足りないと思う。



それではよいお年を。