「かなめも」のはなし

あくまで仲間内で、という話なんだけど、この夏のアニメで秀逸だったのは、「かなめも」だよね、ってことで、見解が一致している。何が秀逸ってことになると、そこまで話してたわけじゃないんだけど、とりあえず、ブラックなことだと思う。


かなめも」の原作は典型的な萌え4コマだし、おにゃのこ達がにゃんにゃんするしで、そこのところだけを見ていれば、「なんだ、ただの萌えアニメか」と勘違いしかねない。
ところが、この作品、そうやって視聴者を勘違いさせるほどやさしくはないらしい。

普通、萌え4コマといえば、底抜けに明るい作品なのである。作風は明るいし、おにゃのこだけで構成される世界は可愛いし、シリアスな展開・・・というのもあるにはあるけど、それは作品全体の雰囲気を印象付ける程度には至らない。せいぜい、作品全体の流れの中で、ピリッと刺激を与えるために用意されたイベントであり、最終的には何らかの救いがあるのが普通であろう。
そこんところはらき☆すたとかけいおん!を見たら、なんとなくわかる。


ところが、この「かなめも」の主人公の中町かなは、両親がすでに他界しており、そのために頼って一緒に暮らしていた祖母までもなくなってしまうという、とんでもなく壮絶な境遇である。本来ならば、彼女のような子供はどこかの施設に預けられるはずだ。そういうレベルなのである。物語の初めから壮絶である。
それで、かなが求人広告を見て転がり込んだのは、「風新新聞」の専売所であった。かなはその専売所に住み込みで働いている人たちと一緒に、新聞配達のアルバイトをしながら、生計を立てていくことになる。

そもそも新聞配達、という時点で、中学生の女の子の体力で務まるかどうか大変怪しいきついバイトであることは想像に難くない。そういえば、大学で一緒のクラスだった子で新聞配達のアルバイトをしていた子がいたけど、その子が時々新聞の購読の勧誘をしてたのを見たことがある。そういうこととかネット上の噂を考えると、やっぱりきついバイトなんだろうと考えてしまう。
そういう労基的にはアウアウな感じの職場で、なおかつ、3浪ちゅうの浪人生とか、金にがめつい小学生とか、人生に背水の陣を敷いている人たちと一緒に働くわけで・・・・

他の登場人物を含めても、何かとブラックである(まあ、作者のブログには、「お世話になった専売所はとてもいいところだった」という旨の話が書いてあったけど)。
なんつうか、見た目的には明るいし、かわいらしいのに、一皮めくると、壮絶にブラックで鬱である。一体なんなんだ、この作品。

あと、最後のエピソードから言っても、「かなめも」の「めも」は多分日記っていう意味で間違いないと思うんだけど、なくなったおばあちゃんに対してずっと日記をつけている、っていうのも、(感動的な話ではあるんだけど)おばあちゃんの死を強調するエピソードだと考えると、この作品がどうして「死」、「孤独」、「社会の暗い部分」と萌え4コマを組み合わせようと思ったのか、とっても不思議である。


話の途中にいきなりミュージカル展開になったりとか、シュールだなあ・・・って漠然と思っていたけど、よくよく考えてみれば、そのシュールさって作品の全体からあふれ出てきているものなんだなあ、っていまさらながらに思ったのでした。


そういえば、3巻の表紙がくぎゅだったような・・・買おうかな。

かなめも (3) (まんがタイムKRコミックス)

かなめも (3) (まんがタイムKRコミックス)


黒い部分という共通点だけ。後悔はしていない。